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高森明勅
2023.1.4 08:00皇室

3種類の宮中「正月行事」と天皇の3つのお立場との対応関係

これまでの歴史から抽出できる天皇のお立場は、
およそ以下の3つに整理できる。

①皇室の祖先神・天照大神に由来する系統と
精神の正しい「世襲」継承者
②国家の公的秩序の頂点
③国民結合の中心

今の憲法では、これら3つのお立場について―

①については「皇位は世襲」(第2条)、
②については「日本国の象徴」(第1条)、
③については「日本国民統合の象徴」(同上)

―という表現で、それぞれ規定しているように受け取れる。

宮中の正月行事にも、上記の3つのお立場が
そのまま映し出されている。

(1)皇室祭祀として1年の最初に行われる
「四方拝(しほうはい)」と「歳旦祭(さいたんさい)」
(共に1月1日)は、①に対応する行事だ
(憲法上、国事行為でも公的行為でもない、その他の行為とされる)。

(2)憲法上の国事行為の中で唯一(!)の恒例「儀式」である
「新年祝賀の儀」(同上)は、天皇が公的な秩序において
立法・行政・司法の三権より“上位”に位置付けられ、
かつ形式の上でわが国を対外的に“代表”する
地位にいらっしゃることを表示し、②に対応する行事だ。

(3)私がプレジデントオンラインの昨年12月の
「高森明勅の『皇室ウォッチ』」で紹介したような経緯で
(そこでは昭和天皇ご自身のお気持ちが決定的な役割を果たした!)
コロナ禍前の形に定着した「新年一般参賀」(1月2日)は、
③に対応する行事だ(公的行為とされる)。

「天皇とは何か」について真摯に向き合おうとする場合、
こうした具体的な手がかりに目を向ける必要がある
(ちなみに皇位継承に伴う儀式についても、
「剣璽(けんじ)等承継の儀」と①、「即位の礼」と②、
「大嘗祭(だいじょうさい)」と③がそれぞれ対応する)。

追記
1月2日の参賀には、長男、元日にサプライズで
シンガポールから帰国した長女、更に次男の他に、
長男の長女、つまり私の孫娘(今年3月で3歳)も加わった。
初めて3世代揃っての参賀だった(但し記帳のみだったが)。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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